外国人研修生への源泉税
日本は製造業の裾野が広い国ですので、外国人研修制度を積極的に活用している会社も多いと思います。
ご存知ない方のために簡単に説明すると、外国人の技能習得を目的に3年間会社に受け入れる制度です。
この3年間は技能を磨くために実作業を行う、という点では同じなのですが、1年目は研修生、2,3年目は実習生というように、その待遇は年数により異なります。
また、技能を磨くためと言っても、会社としても仕事を手伝ってもらうことになりますから、会社からは外国人研修生・実習生にお金を支払うことになります。
この支払はどのように会計処理したらいいのでしょうか?
– 1年目は研修生扱いなので、研修手当として支給
– 2,3年目は雇用契約なので、給料として支給
というふうに区分して経理することになります。
それでは源泉税はどうなるのでしょうか?
– 1年目は研修手当なので、「租税条約による届出書」を税務署に提出すれば免税
– 2,3年目は給料なので、日本人従業員と同じように源泉徴収
というように、異なる取扱になるので注意してください。
と、ここまでは実際に研修生を受け入れた時に説明あるかと思いますので、わざわざ取り上げなくても特に問題はないと思います。
ただこれは分かったとしても、実際には困った処理が起きることがあるのです。
1年目の研修生に残業などを御願いすることは不法行為になるためできないのですが、なんらかの事情で研修生に対して時間外に作業を御願いしてしまった場合です。
してはいけないことですが、実際にやってしまったとしたら、研修生に残業代を支払わなければなりません。この支払はどのように処理すれば良いのでしょうか?
多くの場合、研修手当の上乗せ、ということで処理していることが多いと思います。
ただ問題は、税務署は届出をした分までしか免税を認めてくれませんので、税務調査の際にこの残業代相当分について、源泉徴収義務違反として追徴してくることです。
つまり、税務署のスタンスは、不法行為であろうと残業をさせたのだから、その残業代については給料扱いにして源泉税を徴収する義務がある、という立場を取ってくるのです。
先日立ち会った税務調査では、初日からここで取ろうと狙ってきていましたので、同様のケースが多々あって味をしめているのでしょう。
従って、研修生に残業をさせるということは、不法行為が発覚して今後受入ができなくなるリスクを冒しているだけでなく、税務署からも追徴で源泉税分課税されるリスクも負っていることになりますので、本当にその残業が必要かどうか、慎重な判断をお勧めします。
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