海外子会社からの配当についての益金不算入制度
少し古い話になってしまうが、8月22日に経産省から平成21年税制改正要望として提言された「海外子会社からの配当についての益金不算入制度」は、非常に興味深く見守っている。
平成20年税制改正の段階から「日本企業の海外利益の国内還流」というテーマは議論されており、今回の提言はより具体的に踏み込んだ内容となっていることから、平成21年税制改正での実現可能性もそれなりにあるのではないかと考えている専門家も多い。
本提言の趣旨は、簡単に言えば以下のような内容である。
<現行制度の概要>
海外子会社からの配当は日本親会社で益金計上し、日本で法人税等を支払う。ただし、海外でも税金を支払っているため、二重課税になる。この二重課税については、税額控除制度のもとで排除することになるが、税額控除制度自体が非常に難解であり、また全ての二重課税が排除できるわけではないという問題もあり、海外子会社に利益を留保しているケースが多いと考えられている。
<提案の趣旨>
海外子会社からの配当は日本親会社で益金算入しない。このため二重課税も発生しない。そうであれば、海外子会社は日本に配当として送金しやすくなるので、国内に資金が還流されてくるのではないか。
経産省の目論見がこの提案によって実際に達成されるかどうかはともかく、実際にこの提案の通りの制度になったら、海外に進出している会社にとっては大変結構なことではないか。むしろ逆に海外への投資が増えて逆に資金が流出しちゃうんじゃないの?とも思うくらいだ。
ただそこは税金を取りたい人が考えることなので、実際に税制改正事項となった場合には、いろいろと使いづらくなるような制度へと改悪されることだろう。この趣旨をそのまま制度化すると税収が減るのは間違いないところだ。
国の考えることは、提案の趣旨の立派さと実際に出来た制度の使い勝手との大きなギャップには、いつもながら本当に落胆させられる。「これじゃ実際使えないじゃん!立派なモチを絵に描いただけじゃん!」となることが多いのである。
今回の提案で言えば、以下の点あたりで足かせを嵌めて税収減を補おうと考えているようなので、実際に税制改正案が公表されるようであれば、十分注意しておきたい。
- 益金算入割合(どうも全額を認める訳ではなさそうだ)
- 配当に係る源泉税の直接税額控除不可、間接税額控除の廃止(みなし税など場合によっては現行の方が有利になるかも)
- タックスヘイブン税制(現行では海外子会社は配当をすれば日本で益金算入されて課税できるため、タックスヘイブン税制の適用対象外となっている。ここはタックスヘイブン税制も含めて大幅に調整する必要あり)
- 税額控除制度自体の見直し(どさくさに紛れて何か変えてくるかも)
- 税額控除の経過措置(どこまで繰越できるか)
- 適用要件の強化(添付書類や調査強化の可能性)
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