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タックスヘイブン対策税制

来料加工に対するタックスヘイブン税制

来料加工取引を巡る訴訟で初めての司法判断が示され、来料加工形態は製造業であるとの結論となったようだ(税務通信平成21年7月6日号の記事より)。

来料加工形態は日本の税務上の取り扱いが何年もの間ずっとグレーな状態に置かれており、華南地方に進出している日本企業はずっと不安定な立場が続いている。
現在何件も国税側と会社側で争いになっているが、これまでは国税不服審判所止まりであり、裁判所から判決として出されたのは今回が初めてであることから、その結果が注目されていた。

双方主張すべき点があるので裁判までなっているわけであるから細かいことについてはここでは言わないが、ひとつ強く言いたいのは、「早く法律で明文化して法的な安定性を確保して欲しい」ということである。

もともとのタックスヘイブン税制の趣旨は、「低税率国の経由による課税逃れの防止」である。本来であれば、製造業であるか卸売業であるかなどはどうでもいいレベルの話であって、来料加工という形態が「低税率国の経由による課税逃れの防止」なのかどうかこそが国として問題とすべきで点ではないか?つまり、これだけ注目されている論点なのであるから、このような観点で税制改正の論議を行い、速やかに法制化することが筋ではないだろうか。

現状を考えると、立法者は裁判中という理由によりこの論点から逃げているとしか思えない。当然ながら裁判で争われているのは、製造業か卸売業かという現税法に従った解釈の範囲を出るものではないのだから、「タックスヘイブン税制とはこうあるべき」というようなタックスヘイブン税制の趣旨に踏み込んだ判決が出るのを期待するのは筋違いである。

なお、私見を述べれば、そりゃ製造業か卸売業かと言われれば一般的なくくりでいけば製造業だろう。ただ来料加工ビジネスモデルはそもそも日本の税金逃れのためにできたスキームではなく、外資企業が中国国内に合法的に進出できるようにと、華南の地方政府と香港を中心とした外資企業が中国の外貨規制や国内法に抵触しないように知恵を絞って生み出した産物であり、モデルは香港企業と中国地方政府との契約になるように作られている。当然中国語だ。物理的には香港企業じゃなくてもこのような来料加工形態はできるはずだが、実務上は中国地方政府側は勝手知ったるモデル契約で締結することを望むはずであり、香港以外から進出してくる外資企業は一度香港に法人を設立し、その法人を使って来料加工契約するというのが、実際の流れではないだろうか?事実、理論的には可能であるにも関わらず、どんなにコンプライアンスの優れた会社であろうとも、香港法人を挟まずに日本法人と直接来料加工契約を結んだ例は聞いたことがない。これは日本企業に限ったことではなく、他国も同様だ。つまり、来料加工形態は単なる課税逃れなんかではなく、華南地方に工場を進出する場合には最も経済的合理性のある方法であるということである。近年の法改正で中国国内に独資企業を作ることができるようになったからという根拠で従来からある来料加工形態を課税逃れであるというのは、後出しジャンケンのようなものである。

要は来料加工形態がタックスヘイブン税制の適用除外となるように法改正すべきであるということだ。もしこのように改正したとして、中国の独資企業がみんなこぞって来料加工形態に組織変更するのであれば、来料加工形態は課税逃れであると言わざるを得ないが、来料加工企業と独資企業にはそれぞれ有利不利があり現実問題としてそんなことはあり得ない。

この問題は普段から注目が多いが、どうしても根本的な議論ではなく目先の技術論が目立つ(裁判で勝つか負けるかが最大の注目点なのでこのこと自体はやむを得ない)ので、この点については機会に応じて声をあげていきたいと考えている。

来料加工へのタックスヘイブン対策税制

今月号の月刊「国際税務」に最近の裁決事例に関する解説記事が出ていました。

来料加工形態を採る香港子会社に対するタックスヘイブン対策税制の適用については、長年国税側と企業側との間で争いとなっているところですが、未だ国税審判所レベルの裁決までしか出ておらず、裁判で白黒ついていないのが現状です。

今回の記事も国税審判所の裁決の要旨を解説したものでした。

 

これら訴訟の最も重要な争点は、「来料加工形態は製造業か卸売業か?」という点です。

現在の法律上、この認定によってはタックスヘイブン対策税制の適用除外になるかどうかが全く変わってくる一方、来料加工形態はその判定が考え方によってはどっちにも解釈できるからです。

 

 企業側 : 日本標準産業分類上、製造卸業に該当 => 卸売業 => 適用除外

 国税側 : 実態としては製造業 => 適用対象

 

形式的には、国税庁通達で「原則として日本標準産業分類をもとに業種を判定する」とされていますし、来料加工形態を日本標準産業分類に当てはめれば製造卸業になるでしょう。

一方、実態から見れば、製造業の方が一般常識に近いというのは間違いないでしょう。

結局裁判の結果は、形式重視なのか、それとも実態重視なのか、というところで決まってくる訳で、こういう不毛な争いは裁判官次第で決まってしまうとしか思えません。

来料加工なんて十分理解できる裁判官はそんなにいるはずないですし、裁判官からしたら企業が租税回避しているような第一印象を持つのは間違いないところですから、これは分が悪い勝負だと思います。実際にこれまでは企業側が負けている裁決が多いですし。

 

このように、仮に「実態で判断する」とのコンセンサスが今後生まれた場合、現行法上は来料加工形態はタックスヘイブン税制の適用対象となります。

ただ、これはタックスヘイブン対策税制のそもそもの趣旨に合致しているのでしょうか?

タックスヘイブン対策税制の趣旨は、「低税率国へ租税回避目的の法人設立による課税逃れを防止する」ことです。

来料加工形態の香港法人はこのような目的で設立したのでしょうか?

違いますよね。

香港と中国の企業誘致や優遇税制から、そのような形態でビジネスを行うことが企業利益に合致すると判断して、リスクを冒して日本企業が進出していった訳です。

決して日本の租税回避目的で進出した訳ではないはずです。

従って、個人的には、訴訟を起こすのであれば当然ここにも争点をもって来なければ勝てないと思いますし、日本企業の活力を削ぐような結果にならないように大本のところで戦わないといけないと思っています。

 

本来であれば、これだけ長い間グレーな状態で放置して企業の安定性を阻害しているわけですから、裁判官に頼って裁判の結果待ちというのではなく、十分に専門家が議論して、法律上で明確に考え方を示すのが筋だと思っています。

税制改正の場で取り上げて早急に深い議論をしていただくことを切に願っています。

 

 

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