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海外子会社
香港経由での中国投資の優位性
- 2009-06-12 (金)
- 国際税務について
中国、特に華南地域に新法人を設立する場合、投資ルートとしては二通りあります。
(1)日本から中国へ直接出資
(2)日本の香港子会社から中国へ出資
香港は華南地域にありながら中国とは制度が異なる異質な地域ですので、香港を間に入れることでいろいろメリット・デメリットがでてきますが、ここではそれらについては全て無視して、税金だけに着目してみます。
平成21年度税制改正がある前は、明らかに(1)日本から中国への直接出資、が有利だったと思います。
その主たる根拠は、中国法人の配当を日本に送金する場合です。
(1)の場合は、中国から日本への配当の際に10%源泉徴収されますが、日中租税条約で10%のみなし税額控除も取れますから、日本側で合計20%分直接税額控除を受けることができます。
(2)の場合は、中国から香港への配当の際に5%源泉徴収され、香港から日本への配当の際には源泉徴収されません。一見すると源泉される金額は少ないのですが、日中租税条約の適用はないため、日本側でみなし税額控除を取ることができません。間接税額控除によって(1)との間で有利不利もでますが、普通はこのデメリットが大きすぎるため、(1)の方が有利になります。
また他にも、(2)の場合は、香港法人をただの箱にしてしまうと、タックスヘイブン税制の適用除外要件を満たせないことから、香港法人の中国からの配当所得にも日本の税率でみなし課税されてしまう可能性もあります。
つまり、(1)で行っておけば、税務上はそれほど問題なかったかと思います。
ところが平成21年税制改正によって、海外子会社の配当益金不算入制度が出来ました。
これによって、日本において、海外子会社からの配当については直接も間接も税額控除を取ることができなくなりました。
すると、どのように変わるのでしょうか?
(1)の場合は、中国から日本への配当の際に10%源泉徴収されますが、日本では税額控除は取れませんので、合計で配当額の10%がそのまま税金負担、ということになります。
(2)の場合は、中国から香港への配当の際に5%源泉徴収され、香港から日本への配当の際には源泉徴収されません。日本では税額控除は取れませんので、合計で配当額の5%が税金負担、ということになります。また香港では配当所得については課税されませんのでその他追加の税金負担はありません。また、日本のタックスヘイブン税制も香港法人が子会社から得る配当については対象外とするように改正されれましたので、単にペーパーの中間持株会社として活用する場合にはタックスヘイブン税制の心配もありません。
つまり、配当額の5%分だけ、香港経由の方が税金負担が確実に少なくなるのです。従来は税額控除の方法が非常に複雑だったため、(1)と(2)のどちらが有利かについては実際にはケースバイケースということが多かったのですが、今度は税額控除自体無くなりましたので、ほとんどの場合ではこのような結果になることは明らかです。
上記のとおり、税務上有利な中国投資のルートは大きく変わりました。古い情報で判断すると間違えてしまいますので、特にこのような大きな決断については常に最新の情報にて判断されてください。
生活対策
- 2008-10-31 (金)
- 国際税務について
先日書いたばかりの「海外子会社からの配当の益金不算入制度」ですが、昨日政府から公表された緊急経済対策「生活対策」の中でも、成長力強化対策の具体的施策として記載されていました。
これでどうやら平成21年税制改正で法制化されるのは間違いないでしょう。
仮に法制化された場合、例年通りだと実際に施行されるのは平成22年4月1日からとなるだろうから、それまでに海外子会社から配当の決議を行う予定のある会社については、決議を見合わせたり配当額を必要最低限にするなどした方が賢明でしょうね。
ただし法制化に向けては、先日述べたように論点は結構あります。特に税額控除制度やタックスヘイブン税制との調整は「あっちを立てればこっちが立たず」なので、実際にどのような案が出てくるかによって使い勝手がかなり変わってくるはずですし、場合によっては海外投資のスキーム自体もガラッと変わるということも考えられます。
いずれにせよ、少しでも会社の手取りが増えるような改正であれば大歓迎です。
その他目を引いたものとしては、
・中小企業に対する軽減税率の時限的引き下げ
・中小企業の欠損金の繰戻還付の復活
この辺りは即効力があるので是非決めて欲しいですね。
また、今回赤字国債を財源としなかったことについては個人的には満足してます。
だいたい日常社会では返済期限や方法を明確にしないと借金できないもんですが、どうも国の場合は「今は景気が悪いので借金して消費します。借金は景気が良くなったら返済するよ。返せそうに無いときは借り換えということで御願い!」というような流れで簡単に借金してるように思えてならないのです。
仮に赤字国債を発行するなら、「10年後の償還時には、○○政策の効果による収入増により2兆円、xx税の増税による収入贈により3兆円を財源として返済します。返済できなかったら、支出を削ってでも返済します。従って、必ず返済できます。」と約束するのが筋じゃないですか?そうじゃないと貸してもらえないですよね?国の場合は、安易に借り換えできるような仕組みがそもそも問題になっていて、モラルハザードになってしまっているんだと思います。
まあ政治は良くわかんないんですけど、なんでこんなに国債ためちゃったの?というのが普段から素朴な疑問だったので、ついでに書いてみました。
海外子会社からの配当についての益金不算入制度
- 2008-10-28 (火)
- 国際税務について
少し古い話になってしまうが、8月22日に経産省から平成21年税制改正要望として提言された「海外子会社からの配当についての益金不算入制度」は、非常に興味深く見守っている。
平成20年税制改正の段階から「日本企業の海外利益の国内還流」というテーマは議論されており、今回の提言はより具体的に踏み込んだ内容となっていることから、平成21年税制改正での実現可能性もそれなりにあるのではないかと考えている専門家も多い。
本提言の趣旨は、簡単に言えば以下のような内容である。
<現行制度の概要>
海外子会社からの配当は日本親会社で益金計上し、日本で法人税等を支払う。ただし、海外でも税金を支払っているため、二重課税になる。この二重課税については、税額控除制度のもとで排除することになるが、税額控除制度自体が非常に難解であり、また全ての二重課税が排除できるわけではないという問題もあり、海外子会社に利益を留保しているケースが多いと考えられている。
<提案の趣旨>
海外子会社からの配当は日本親会社で益金算入しない。このため二重課税も発生しない。そうであれば、海外子会社は日本に配当として送金しやすくなるので、国内に資金が還流されてくるのではないか。
経産省の目論見がこの提案によって実際に達成されるかどうかはともかく、実際にこの提案の通りの制度になったら、海外に進出している会社にとっては大変結構なことではないか。むしろ逆に海外への投資が増えて逆に資金が流出しちゃうんじゃないの?とも思うくらいだ。
ただそこは税金を取りたい人が考えることなので、実際に税制改正事項となった場合には、いろいろと使いづらくなるような制度へと改悪されることだろう。この趣旨をそのまま制度化すると税収が減るのは間違いないところだ。
国の考えることは、提案の趣旨の立派さと実際に出来た制度の使い勝手との大きなギャップには、いつもながら本当に落胆させられる。「これじゃ実際使えないじゃん!立派なモチを絵に描いただけじゃん!」となることが多いのである。
今回の提案で言えば、以下の点あたりで足かせを嵌めて税収減を補おうと考えているようなので、実際に税制改正案が公表されるようであれば、十分注意しておきたい。
- 益金算入割合(どうも全額を認める訳ではなさそうだ)
- 配当に係る源泉税の直接税額控除不可、間接税額控除の廃止(みなし税など場合によっては現行の方が有利になるかも)
- タックスヘイブン税制(現行では海外子会社は配当をすれば日本で益金算入されて課税できるため、タックスヘイブン税制の適用対象外となっている。ここはタックスヘイブン税制も含めて大幅に調整する必要あり)
- 税額控除制度自体の見直し(どさくさに紛れて何か変えてくるかも)
- 税額控除の経過措置(どこまで繰越できるか)
- 適用要件の強化(添付書類や調査強化の可能性)
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