■国際税務 2008年10月22日16:04

「小説を真似て」脱税

朝起きると妻が早速、「小説を真似て脱税して捕まったってニュースをやってたよ!こないだあなたが読んでいた『永遠の旅行者』だったような・・・」と話しかけてきた。

『永遠の旅行者』は先週私が夢中になって読んでいたので、普段時事ネタにあまり興味がない妻にもインパクトのあるニュースだったらしい。

早速ニュースを観たら、確かに小説を真似て脱税したとして東京地検に告発されたとのニュースが流れていた。だが、そのニュースではその小説名や詳しい手口、容疑については何も報道されていない。

そこでインターネットで調べたところ、読売オンラインでのみ記事が見つかった。確かにテレビも日テレだった。スクープ扱いなのだろうか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081021-00000066-yom-soci

小説名は記載されていなかったが、手口についてはおおよその内容が書かれていた。

通常、海外が絡んだ脱税事件として報道されるものはどれも手が込んでいたり、法律の隙間をついていて一応合法的に見えるものが多く、結局は租税回避目的の有無という論点で争われることが多い。

『永遠の旅行者』は小説なのだが、その中で海外を絡めた節税と脱税のラインについて著者が意見を述べている部分があるが、非常によく調べてあり理屈的には正論に思える。今回のケースはどこを真似してどんな容疑で告発されたのかと興味深く記事を見たのだが・・・。

結論から言うと、「小説を真似て」というレベルの話ではなかった。日本に住んでいなければ大部分の所得は日本で課税されないというところだけ理解して、タックスヘイブン国に移住したことにして日本で税務申告をしていなかったという話であり、実際に日本にそのまま住んでいたのでは何の論点もない単なる脱税である。日本に住んでいるかどうかくらいはパスポートで一目瞭然であるし、質問されたが最後、逃げ切れるものではないので、あまりに安易と言わざるを得ない。

またこの読売オンラインの記事によると、『永遠の旅行者』ではなく別の週刊誌やノウハウ本を読んで参考にしているように読み取れるが、いずれにしろこんな安易なやり方を勧めている本はないであろう。

むしろ今回のニュースは、このようなノウハウ本などが売れていることに危機感を持った国税側が、「小説やノウハウ本等を真似しても脱税として捕まえますよ!」と、読者に警告したいがために敢えてテレビでは「小説を真似て」という部分を強調したのではないかと思う。