外国人漁船員は非居住者か
水産会社の外国人漁船員の配乗等の業務を請け負った法人に対する支払が課税上問題となった訴訟に関する判決(平成22年2月12日判決 平成18年(行ウ)第651号他)に関する記事が、今週の税務通信に載っていた。
で、その中で争点の一つとなっていたのが、「外国人漁船員は非居住者か」どうか。
判決では、以下の理由により、日本の居住者ではないため、非居住者であるとしている。
①外国籍である。
②専ら日本国外で乗船・下船している。
③日本国内に上陸することはない。
④生計を一にしている配偶者や家族の居住地は日本国外である。
⑤勤務期間以外に生活する場所は日本国外である。
⑥日本国内に継続して居住することはないから居所も日本国内にない。
これまでの判例等から表面的に解釈すれば、まあ確かにそういう結論になるだろうねー、と思ったが、心情的に納得できない。
単純に船舶上を日本国外と結論づけていいのだろうか?
日本法人が実質的に雇用して、その日本法人が所有し運行している漁船で人的役務の提供を受けている。
確かに漁船は日本国外を運航しているが、漁船の中まで日本国外だと簡単に結論づけられるのか?
全て日本法人の管理下にある状況で働いているのだ。
そもそも外国人漁船員の所得を日本国内源泉所得であるとする根拠は、所令285条1項2号の「内国法人が運航する船舶又は航空機において行う勤務その他の人的役務の提供」。
このような取り扱いにしているのは、このような船舶又は航空機の中は日本の管理下にあるので日本国内とみなす、と考えているからじゃないのか?
それなのに、居住者の判定上は、日本国内に住所も居所もないという。
日本法人の運航する船舶が例え日本国外にいたとしてもそこでの稼ぎが日本国内源泉所得になるというのであれば、そのために生活する場所(居所)である船舶の中は、少なくとも日本国内の居所に当たるのではないか?
課税処分やこの判決はまさに日本にとって都合のよい解釈をしているだけであって、矛盾しているとは思わないのだろうか?
それに、配偶者や家族だってそれに本人だって、日本に出稼ぎに行ってると思っているだろう。
彼らに対する日本の回答として、本判決はあまりに冷たいものではないだろうか。
もし、いろいろ議論を尽くした上で、あくまで現行の法律ではこのような解釈しかできない、というのであれば、法律自体を変えるべきだ。
非居住者だからといって、少ない給料の中から額面の20%も税金として取られてしまうのでは不合理すぎる。
そんな国には人が集まるわけがない。
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