■国際税務 2009年09月29日15:21

海外金融商品の税務について

現在の日本の法律では、日本居住者が日本国外で組成された金融商品を取得することを禁じていません。

従って、日本国内の金融商品よりもより利回りの高い商品やより手数料の低い商品があれば、自ら直接日本国外の金融会社からそのような金融商品を購入することができるため、投資家の間では近年そのような動きが特に活発になっているように感じます。

このような場合でも、日本居住者であれば、全世界所得に対して日本で納税することになっておりますので、日本の国内税法に基づき適切な確定申告を行わなければならないのですが、この「適切な」というのが非常に難しいのです。

というのも、日本国内の所得税法では、所得の区分を10種類に分け、それぞれに異なる所得計算方法や税率を使うことになるのですが、海外の金融商品の中には日本の税法が全く想定していないものも存在するため、「適切」に申告しようにもその当てはめが非常に困難なのです。

このような金融商品の販売者が、日本の証券会社や保険会社であれば、事前に国税庁に対して文書で質問等をしてくれるため、少なくとも通達ベースでは取り扱いが明確になるのですが、海外の販売者はそのようなことをしてくれません。また原則として、国税庁が通達という形で取り扱いを公表しない限り、各税務署長や税務職員の個別判断になりますので、事前に税務署に問い合わせたとしても安全とは言えないのです。

税務署が当てにならないとなれば、各投資家個人が税務署や税理士の見解を踏まえて課税リスクを自己判断して行うことになります。つまり、このような複雑な金融商品の購入は、最終的には解釈論に行きつくことから、それ自体課税リスクが避けられないのです。

一般的には納税者側は最も税額が少なくなる解釈をし、課税当局側は最も税額が多くなる解釈をしますから、最終的には裁判になり、裁判所でその解釈論の是非が結論づけられるようになります。この時点でようやく判例や通達ができるわけです。

従って、このような判例や通達が出ていない複雑な金融商品を購入する際には、自己流の勝手な解釈で安心するのではなく、どのような別の解釈が存在し、最悪の場合どのくらい追徴課税されるのかについて、事前に十分に検討した上で、投資の意思決定及びその税務申告方針の決定をする必要があると思います。

税務署に全く通用しない独自の理屈では、下手すれば脱税扱いにもされかねません。個人投資家であっても、税務リスクの判断は実質的な利回りの判断をする際の重要な要素であると思いますが、個人投資家の場合は機関投資家と異なりこの部分を軽視している方が多いような気がします。